播州織の龍馬ジーンズが人気
幕末の志士 坂本龍馬を描いて人気のNHK大河ドラマ『龍馬伝』。幕末を駆け抜けた英雄を演じる福山雅治さんの、凛としたたたずまいを彩ったのが、播州織の袴です。撮影に使用された袴と同じ、グレーに黒の縦じまが入った生地で作った「龍馬ジーンズ」は、西脇市・播州織工房での限定販売にも関わらず、全国から注文が相次ぎ、若者を中心に静かなブームになっています。裏地には、龍馬の名前にちなんで、天空をかけるかのような馬と龍があしらわれたこだわりの逸品です。
播州織の歴史
播州織は、寛政4年(1792年)、宮大工の飛田安兵衛が京都西陣織の技術を、地元に持ち帰ったことが始まりといわれています。以来、農家の副業として普及し、西脇市を中心とした北播磨の地で、今日まで脈々と受け継がれてきました。「産元」「染色」「織布」「加工」と分業し、それぞれの技術を切磋琢磨しながら、地域全体で伝統を守り続けています。この北播磨地域で製造された布地で、一定基準を満たしたものだけが、『播州織』というブランドを冠することができるのです。
世界的なブランドも認める品質
播州織がこの地域で栄えた理由に、自然豊かで、染色に適した清流が多かったことがあげられます。キレイな軟水で磨かれた糸は、黄ばみが少ないといわれます。布地に色を施す「後染織物」に対し、美しく染められた糸で織り上げる「先染織物」が播州織の大きな特徴で、先染織物としては全国70%を超えるシェアを誇ります。縦糸と横糸を紡ぐことによって生まれる、光沢ある豊かな色柄と布の丈夫さ、自然な肌触りが高く評価され、バーバリーをはじめとする世界的な一流ブランド品にも、実は播州織が使われているのです。地域の工場では世界ブランドの新作がズラリ、という光景も珍しくありません。
進化する播州織
「龍馬ジーンズ」に代表されるように、いま産地では、播州織の伝統と品質を守りながら新たな取り組みも始まっています。学生達とのコラボレーションによる新ブランドからは、若い感性と伝統技術が両輪となったユニークな製品が生まれています。また、他地域の伝統である水引細工と協力をし、ハンカチとして永く愛用していただけるご祝儀袋も人気です。知る人ぞ知る存在として、華やかな世界的ブランドを陰ながら支えてきた播州織ですが、これからは地域ブランド「播州織」でもって、国内需要の拡大や知名度向上にも取り組んでいきたいと、地元関係者は語ります。確かな伝統と技術を基盤にしながら、新たな取り組みを続ける播州織の進化は、兵庫県の自然豊かな北播磨を拠点に、これからますます加速することでしょう。